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テディベアの誕生についてはいろいろな説がありますが、まずはもっとも良く知られているエピソードをご紹介します。

1902年。アメリカでの出来事です。
第26代大統領セオドア・ルーベルトが、ミシシッピーで熊狩りに出掛けたのですが、そのときは獲物がしとめられなかったのでした。そこで、大統領のお付きの者たちが、木に縛り付けて用意した熊を撃つようにと勧めたのです。しかし、大統領はそれを拒絶し、その熊を逃がしてやったという、心温まる逸話が残っているそうです。そこで、その話をもとに、政治漫画家のクリフォード・K・ベリーマンがワシントン・ポスト紙にそのストーリーを漫画にし、発表しました。


 
ニューヨークで玩具店を営んでいたミットムさんご夫婦が、この逸話に目をつけたのです。
この大統領の素敵な逸話をもとに、熊のぬいぐるみを制作し、テディ(ルーズベルトの愛称がテディだったことから)と名付け、発売したところ、大流行となったそうです。ミットムさんご夫婦のお店は後にアイディアル社という会社になりました。これはテディベアがアメリカで誕生したと言われる説の一つです。


一方、これとほぼ同時期にドイツではボタン・イン・イアーで有名なシュタイフ社で熊のぬいぐるみが作られ、これがアメリカに輸出されて記録的に売れたそうです。このぬいぐるみはモヘア製で、手足にジョイントの入ったものでした。
テディベアがドイツで誕生したという説を強く唱える人が多いのは、このシュタイフ社製のベアによってテディベアブームがいっそう大きくなったためかもしれません。

初期のシュタイフ社製のベアの形(手足が長く、鼻が尖っている)は現在の多くのテディベアの原型となっているとも言われています。他にも諸説あるようですが、ここでは割愛させていただきます。


そもそもテディベアに定義というものはあるのでしょうか。

これもいろいろな説があって、どれが正しいとかいったものは決められないのですが、「ジョイントが付いていて手足が動かなくてはテディベアではない。」という人もいれば、「熊のぬいぐるみなら何でもテディベアでしょ。」という人もいます。決して絶対の定義ではないのですが、たいてい、モヘア製で、フルジョイント(頭、手、脚、がジョイントで動くもの)で、目がグラスアイやボートボタンのものは正統派のテディベアと言えるようです。何度も言うようですが、これから一つはずれたからテディベアではない、ということは決してありませんのでご安心を。その人にとって、一生付き合えるベアをテディベアと定義して良いのではないでしょうか。

今でこそ、日本でもテディベアの存在は広く知られることとなってはいますが、そもそも欧米では テディベアは男の子用のおもちゃとして考えられていたということはあまり知られていません。
日本では、ぬいぐるみやお人形は女の子だけのおもちゃという観念が強いので「男の子にぬいぐるみなんて」と思われるかもしれませんが、考えてみれば、悲しいときはなぐさめてくれて、楽しいときには一緒にうれしさを分かち合う、そして時には遊び相手にもなり、見ているだけで安らかな気持ちになれるベアを、幼い頃から与えられる欧米の男の子は、とっても幸せなのかもしれません。


男の子だって、つらいとき、悲しいときがありますよね。日本では男の子はそういう感情や気持ちを外に出さないことが美徳とされてしまっているのでなかなか理解されがたいのかもしれませんが、一生付き合えるベアを幼い頃から与えられることによって、穏やかな心をベアと共有する時間が持てるということは、男の子の精神面にもとっても良いことだとは思いませんか。

こんな素敵な欧米の慣習を、日本でも広く受け入れられていってほしいものですね。

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